
PROJECT
ggg/ Evolutionary Tree
生物進化と人工物の発展を系統樹として可視化し、イノベーションの空白と創造の源泉を浮かび上がらせる。

WHY
未来のために歴史を
振り返る方法とは。
社会は急激に変わっています。成長の限界と言われた1972年から50年が経った今でも、我々人類はまだ成長し続けています。生物多様性の崩壊を食い止めるための変化や持続可能な社会を保つためのアクションは、もう時間的な猶予が全く残されていない状況と言っていいでしょう。社会を変える人がもっとたくさん必要だと、心から感じます。どうすれば、そのような人を増やせるのでしょうか。そういえば私達は、物が社会を変えることを「進化する」とよく言っています。社会を変えることが進化だと言うなら、私達はもっと生物の進化から社会の進化を生むためのプロセスを学ぶことができるのではないでしょうか。
進化という科学的概念が登場し、体系的に研究され始めたのは意外なほど最近のことです。例えば, ダーウィンが「種の起源」を発表し、 進化の概念を生物学的に決定づけたのはわずか150年ほど前の1859年のこと。左の進化図は、ダーウィンがスケッチとして残したものです。種の起源に記したダーウィンの思想を引き継いで、生物学者でありアーティストであったヘッケルが、真ん中と右の図のような我々のイメージにある進化系統樹という表現を作り上げました。
自然界は、 適者生存のルールに基づいて、環境に最適化した種が生き残るようにできています。自然環境は刻一刻と変化するため、 生物も変化を常に続けています。どんな状況が訪れても種が途絶えないために, DNAのゆらぎによって 時間経過とともに無数の生物のバリエーションが生み出されるようなシステムが出来上がっているのです。進化図は、かつて無数に存在した生物の中で、適者生存により選び抜かれたものが見せるデザインの系譜であり、自然界における種の生存戦略の見取図と言ってもいいでしょう。
HOW
進化図から発明の
目的を理解する。

人工物のデザインにおいても、技術の進歩、人の趣向性や時代のコンテクストの変容によって、モノは絶えず進化と淘汰を繰り返しています。多様性を前提とした種の発達は、生物の進化の形によく似ています。常に発明は人の進化を補おうとしているようにも感じられます。より速く、より楽に、そんな哲学によって進められてきたデザインは, 進化しようとする人類の本能ではないでしょうか。もし生物の進化とデザインが充分に似ているなら、そのプロセスをよく理解し、発明やデザインに応用することでイノベーションを起こしやすくなるはず。進化思考は、そのような考え方から生まれた、自然から学ぶ新しい創造教育のための手法です。


人工物のデザインにおいても、技術の進歩、人の趣向性や時代のコンテクストの変容によって、モノは絶えず進化と淘汰を繰り返しています。多様性を前提とした人工物の発達は、生物の進化の形に似ています。常に発明は人の進化を補おうとしているようには思いませんか。より速く、より楽に。デザインは、進化しようとする人の本能だと言えるのではないでしょうか。


モノの進化図の空白には、モノのこれからの進化の余地が見えてくるかもしれない。その空白を、僕たちはイノベーションと呼ぶのでしょう。
そこで動物の進化図と乗り物の進化図を描いてみました。驚いたことに乗り物のような人工物の分類学はほとんど発達しておらず、その方法論の確立から進める必要がありまず人工物は、加速度的な技術発展のスピードのため、新技術が用いられたものの寿命が極端に短いことがわかります。技術の発展は不可逆的に起こるため、新技術を使ったデザインはすぐに昔のものとして淘汰されてしまいます。100年前の椅子でも現役で使われている名作が存在する一方で、10年前の携帯電話を使っている人がいないのはそのためです。

あるいは、人工物の方が自然物よりも種の融合が容易なことも読み取れます。自然物においてはクラゲとイヌのように種が遠いものは交配できないけれども、人工物では、意外性のある組み合わせからイノベーションが生まれることがよくあるようです。例えば船と車を融合した水陸両用車両や、ヘリコプターと飛行機の融合によって生まれるオスプレイのような例が、人工物では容易に生まれています。

この進化図は、ギンザ・グラフィック・ギャラリーにおいて、個展「ノザイナーかたちと理由」を開催した際に作られたものです。「もし全てのデザインが自然の模倣なのだとしたら。あるいはデザインという行為そのものが、自然の進化を無意識にシミュレーションする行為だとしたら」という仮説から、「デザインは、物の生物学だ」という考えに基づき、人工物と自然物を対比させて、かたちの奥にある理由や、デザインを発想するための方法に迫る展示を行いました。この考えが進化思考のベースとなっています。

WILL
あらゆる発想法を
統合する進化思考の誕生。
小さな実験的展示から始まった進化思考は、いま日本最大級の規模の自動車会社・不動産会社やアパレルのグローバル企業の経営者など、徐々に賛同者に応援されながら広がりつつあります。(参考記事:
INFORMATION
- What
- ggg/Evolutionary Tree
- When
- 2016
- Where
- Tokyo, Japan
- Client
- Scope
- Installation / Space Design
CREDIT
- Art Work
- Eisuke Tachikawa
- Photograph
- Kunihiko Sato