
PROJECT
MIDORI XS
パッケージをブランドの新コンセプトを伝えるメディアとして活用し、商品の売上が1.7倍に増加。

WHY
新商品を出し続けるだけが
解決策なのか。
市場に多くのモノがあふれ、消費者のニーズが目まぐるしく変化する現代において、企業やブランドは継続的に製品開発やモデルチェンジを行うことでその存在をアピールし、商品を売り続けることを余儀なくされています。しかし、新製品の開発やモデルチェンジには、金型の製作や過去モデルの廃番などが必要となり、大きな環境負荷が生じます。ものづくりが地球環境に与える影響が問題視されている中、新商品をつくり続けることによって消費を促すアプローチは、果たして持続可能でしょうか。
ヒット商品のライフサイクル:商品のライフサイクルは短期化している
HOW
最も小さい文房具、
への再定義。

文具メーカーMIDORIのカラーステーショナリーシリーズは、1994年の発売以来、25年以上にわたって支持されてきたロングセラー文具です。近年、売上が伸び悩んでいた同ブランドが、再起をかけて行うリニューアルに伴うブランディングを私たちが担うことになりました。
これまでのカラーステーショナリーシリーズでは、多彩な色展開を打ち出すことにコミュニケーションの軸が置かれていました。しかし、同ブランドには世界最小の製品という大きな魅力があり、「コンパクト」「軽量」「折りたためる」といった特徴にこそブランドの本質的価値があることが見えてきました。そこで、ユーザーにとって大きなメリットとなる世界最小クラスの文具であることを強く訴求するコミュニケーション戦略を提案し、ブランド名も「とっても小さい」サイズを表す「XS」に刷新しました。
パッケージにおいても、コピーやイラストによって各商品のコンパクトさや収納性などを徹底的にアピールしています。手書き調のタイポグラフィは、MIDORIが創業以来基幹商品としてきた便箋や手帳などを想起させる紙や手描きの暖かさを表現したものであり、同時に賑やかな文具売り場において存在感を示すことを意識しました。また、プラスチック素材によるブリスターパックだった既存パッケージの一部を紙素材に置き換えることで、プラスチック使用量を半減させました。
一方、プロダクトのデザインは従来のカラーステーショナリーシリーズを踏襲しているため、金型も同じものを用いています。ロゴのあしらいやカラーのみを変えることによってシンプルで洗練された佇まいを持たせ、どんなシーンでも利用できるデザイン性と機能性を併せ持つブランドへの再定義を図りました。





WILL
製品ライフサイクルを
延ばすデザイン。
新たなスタートを切ったXSは、従来のシリーズよりも価格設定を上げたにもかかわらず、売上が1.7倍に増加し、全国のコンビニエンスストアなどでも販売されるブランドに成長しました。
売上が低下傾向にあったロングセラーブランドを再起させた今回のリブランディングは、コミュニケーションデザインの力によって、新商品を発表すること以上のインパクトを生み出せることを証明したプロジェクトになりました。
市場競争が激化する中、新商品の投入から撤退までの製品ライフサイクルは短縮化の一途をたどっています。こうした状況において、製品のスクラップアンドビルドを繰り返すのではなく、既存の製品に眠る価値の再発見・再定義を適切に行い、製品ライフサイクルを引き延ばしていくことは環境への負荷を軽減することにつながり、あらゆる領域において求められるアプローチです。こうしたコミュニケーションデザインの力を証明する事例を積み重ねていくことで、サステナブルなブランドやものづくりのあり方を社会に浸透させていくことが、私たちの役割だと考えています。
INFORMATION
- What
- MIDORI XS
- When
- 2016
- Where
- Japan
- Client
- Scope
- Branding / Packaging / Illustration / Photograph
- Award
- Red Dot Award (2022)
- iF Design Award (2022)
- 日本文具大賞 (2020)
CREDIT
- Art Direction
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa)
- Graphic Design
- NOSIGNER (Eisuke Tachikawa, Andraditya D.R., Ryota Mizusako)
- Illustration
- NOSIGNER (Andraditya D.R., Ryota Mizusako)
- Photograph
- NOSIGNER (Yuichi Hisatsugu)